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14 計量カップで検尿

LA QUATTORDICESIMA PUNTATA  "L'ANALISI NEL MISURINO"

第14話 計量カップで検尿

会社にて健康診断 があった。
だいぶ前から「検尿のお知らせ」 という 貼り紙が掲示板に貼り付けてあって、
しばらく気になってはいたのだが、 どうせ全部読めないし
誰かが教えてくれるだろう、と思ってすっかり 忘れていた。

すると前日になってポーターのファビオが、
四角い箱を80セント(2003年11月現在で約100円)でみんなに売りはじめたのだ。
箱を開けてみると、 蓋付きの計量カップ(容量180ccくらいか)が入っている。

そうです、これが検尿容器なのです。
エー、ちょっとー、どこまで入れるのー?こんなにオシッコ必要なの?

人によって言うことは違うのだが、総合して判定 すると
(複数のイタリア人に物事を 聞くときは必ずこの工程が必要になる)、
どうやら朝イチのものを七分目くらいまで 入れればいいんじゃないかとの事。
そしてこれが薬局にて市販されていることも判 明。
彼らにとってはごくごく一般的な事柄であるので、
わたしのこの驚きを 高ぶった感情のまま説明しても、
誰にも理解してもらえなかった。
「日本はねー、まず紙コップにしてからねー、
ちっちゃい容器に 移し替えるの。ほんのちょっとで充分なんだから」。

しかしファビオによる一笑で、わたしの発言はさえぎられた。
「なんでえ、日本人はションベンがちっとしか出ねえのかよ」。
そうじゃない、お前らんトコの医者が要領悪いんだろうが。

ともかく翌日朝は血液検査に備えるために飲まず食わず で、
尿の入った計量カップと ともに出勤した。
量が量なので蓋をギュッと閉め、ビニール袋に入れる。
それを箱に 入れ、さらにビニール袋で覆った。
ビニールの口もきちんと閉めてリュックへ入れ る。
漏れないかどうかが心配だ。
聞けば同僚のルーシーは、昨年、持って来る間にこ ぼしてしまって
少量しか提出しなかったのだと言う。

さて、朝から不思議な雰囲気。
わたしたち事務をはじめ、フロントもポーターも、メ イドさんもレストランの給仕も
みんなが交替交替で地下の広い会議場へ。
ここが特設 診察室 なのだ。
非番の人も続々来る。初めて見る顔のメイドさんもいて新鮮だ。
みんな少しずつ仕事がサボれるし、普段と違うことなので
まるで遠足の時の子供のように ワクワクしている。
そんなわたしもイタリアでの初めての経験に、もちろんウキウキだ。

血液検査のためには朝から何も口にしてはいけなかったので、
エスプレッソ・ コーヒーを飲んでこなかったウエイターのエミリアーノとデヴィッドが 苛々している。
麻薬が切れた中毒者 もおそらくこうなるのであろう。
あっちへ行ったりこっちへ行ったりと挙動不審だし、
妙なことを 口走ったりしていつになくテンションが高い。
イタリア人には CAFFÉ (カッフェ=エスプレッソ・コーヒー、
とても濃いコーヒーのこと)は欠かせないのだ。
かと思うと、フロント係で今日は非番のフォステルが
自分の順番がなかなか来ない ことに腹を立てて
「ちゃんと時間制にしてくれよ」などと ブツブツ独り言を言っている。
さすがきっちり派のドイツ人 だ。

血液は注射器一本分を採取して終了。
次は視力だ。
機械を覗くと何やらアルファベット がたくさん。
ここではお医者さんの質問の内容が分からず、何度も聞き返してしまった。
同じ機械で色覚も調べた。

あとは問診。かなり質問は多岐にわたる。
名前、住所にはじまり、仕事の内容、 病歴、親類調査 などなど。
ここで先生は珍しい東洋人の従業員に対して、 名前の由来や日本の歴史
漢字の歴史についてまでも質問してきた。
ここまできたら何の問診だか。さすがイタリアだ。

あとは心電図、脈、血圧。普段は上が100と低血圧のわたしだが、
自転車に乗って 通勤しているせいか、血のめぐりもいいようで、
全てに異常がないと言われた。 ヨカッター。

そして尿を提出するのも忘れない。
先生に「Ecco.(どうぞ。 )」と渡して、
「Grazie.(ありがとう。 )」と受け取られるのは何だかなあ、 と思ってしまった。

ひどい食生活の割にちょっとした健康志向のわたしである。
健康診断、一年に一度と いわず、もっともっと実施して欲しい。
実を言うと次は献血参加 を狙っている。
日本 みたいにブリックパックやお煎餅、ボールペンなんかを
いっぱい乗せた献血バスが会 社に来ればいいのにと真剣に思っている。

(2003年11月)

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